ポプリは涙を拭い、
ロコタの向きを通り側に変え、
その傍に座りました。
パレード始まるよ、
いっしょに見ようね
そして、その時をじっと待ちました。
通りの先からファンファーレが聞こえてきました。
さぁ いよいよお祭りのクライマックス。
たくさんのおもちゃ達による
パレードの始まりです。
静かな序奏の音は
音楽隊が近づいてくるにつれて
次第に大きくなっていきます。
時計橋から中央広場続く通りには
街中の見物人が集まり
今日一番の賑わいを見せています。
みな胸の高鳴りをおさえ、
一様に息を呑みはじめていると…
真っ赤な絨毯(じゅうたん)の道をおもちゃ達が行進してきました。
先頭に大抜擢(だいばってき)されたのはクマ、ウサギ、コブタのぬいぐるみ。
皆楽しそうに、意気揚々と大勢の観衆の前を通って行きます。
ポプリはおもちゃ達の晴れ姿を
じっと見つめています。
「あっ!」
ポプリは声を上げました。
たくさんの紙吹雪と色づいた風船の中、
兵隊達の列がやってきたのです。
「ほら見て、コロタン
兵隊さんかっこいいよ」
目の先には、
縫い止めたクリーム色の糸を誇らしげに、
立派に演奏するあの兵隊の姿がありました。
ポプリは糸がほつれていないか、
ずっと心配でしたが、
大丈夫そうでほっとしました。
そして兵隊の音楽隊の先に、
次のグループが見えてきました。
続いて登場したのは、
華やかなショーダンサー達。
なんと、あのダンサーの姿もありました。
「見てっコロタン、あの人、
やっぱり一流のダンサーだったんだね」
ポプリは、あのビー玉のおかげで
気球船に乗れたことを思い出すのでした。
そして、あのピエロのサーカス団もやってきました。
周囲では一段と歓声が上がります。
その後ろからはロボット達がやってきました。
「コロタン、ロボット来たよっ!…」
その大きな新型のロボットおもちゃを見て
ポプリはぐっと唇をかみました。
ポプリは今日これまでのことを
思い返しました。
音と光に誘われ、
不思議な世界に
迷い込み、
ロコタと出会ってからは
あっという間でした。
でもこの短い時間の中に
素敵な出来事がたくさんありました。
特急列車で
宙を舞い、
驚きのショーを楽しみ
一生懸命走って…
音の主をみつけました。
空の大冒険を経て…
今この瞬間があります。
この目の前の景色を
コロタンの分までしっかり見よう
ポプリは最後に、そう思いました。
さぁ、フィナーレです。
おもちゃ達の行列は
中央広場に集まり、
大勢の観衆に向かって
整列しました。
音楽隊は最後の演奏に
力を込めます。