大歓声と歓喜に包まれ、
パレードは幕を閉じました。
あの兵隊は興奮冷めやらぬ中、ごった返す観客の中からポプリ達を見つけて駆けつけてくれました。
「…そうですか…ロコタさんは…
それは何とも、やり切れないですな」
直前でエネルギーが無くなってしまった
ことを知り、兵隊はとても残念そうでした。
「お二人にはなんとお礼を言っていいものか。
本当に有り難うございました」
兵隊が感謝を伝えると、
ポプリはすこし間をおいて、こう答えました。
「わたし、あなたの音のおかげで
この世界に来れたの。
コロタンにも逢えて、
パレードも最高だったし、
だから…今日のことは本当に絶対に絶対、一生忘れない。
素敵な演奏、ありがとう!
兵隊さん!」
「いえいえ、私は何も…
…そうだっ」
兵隊は何か思いついたようでした。
「ロコタさんは私が引き取りましょう。
…あとそれと…
ポプリさんは早めに元の世界に
戻った方がいいかもしれませんね。
この世界は人間の体には負担が大きいので」
ポプリは残念そうでしたが、うなずきました。
こうしてポプリは、兵隊に案内され
このおもちゃの世界から
もとの世界へ戻りました。
そして、何週間かが経ちました。
ポプリがいつものように花に水をあげていると、家に小包が届きました。
中には手紙が入っており、
その差出人はなんとあの兵隊でした。
ーーー お元気ですか?
その節はありがとうございました。
お陰様で脚の調子も良く、
私の方は元気にやっています。
さてこの度、ロコタさんを製作したメーカーが新しいモデルを完成させましたので、お贈りします。
面影が少しありませんか?
決して代わりにはなりませんが…。
またお会いしましょう。ーーー
兵隊はあの後、ロコタを持って
直接メーカーに出向いていました。
部品をリサイクルし、
それを使った新型の試作品を一台、無理を言って作ってもらっていました。
小包の中には、手紙の他に
大きなギフトボックスが一つ。
中には…
電池を入れてスイッチを入れると
そのおもちゃはカタカタ動きました。
「うふ、面白い♩」
ポプリはパレードで見たあの大きなロボットにも少し似てるなぁ、と思いました。
ポプリはその新しいロボットのおもちゃに何となく手をあててみました…
するとなんと…
微かに音を聞くことができました。
…遠い遠い、遥か彼方から聞こえてくるような…
また同時にすぐ近くから鳴っているような…、
そんな不思議で温かかい音色でした。
そして、その旋律に呼応するように、
ポプリは自分の"心"からも音が聞こえることに気がつきました。
それは、掛け替えのないあの日の想い出の音…
ポプリはあの日のパレードの曲を口ずさみ、そのおもちゃに聞かせてあげました。