「ねぇ、コロタンは
ずーっとこの世界にいるの?」

「ハイ。
元々とある人間の元へ贈られる予定だったのですが、キャンセルになってしまいまシタ」

「そっかー、それはきっと "くーりんぐおふ" ね」

「自身がプレゼントとして贈られることを
ワタシは楽しみにしていたのですが…
やはり旧式だったから気に入ってもらえなかったのデショウカ…」

「そんなことないよっ!
コロタンかわいいもん、大丈夫!また次があるよっ」

ポプリはロコタを慰めました。

「それが、そうもいかないノデスヨ。

私の体内エネルギーは
もう残りわずかデスノデ」

「えっ! それは大変! 大丈夫なの!」

「といっても、完全になくなるまでにはまだ
余裕があります。
今日1日くらいは全然問題アリマセンヨ!」

「そっか、よかった…」

「人間の世界も興味はありますが…」

ロコタは空を見上げました。

「あの空を見てください、ポプリ。

一点の濁りもなくプラスチックのように澄み渡って、とても綺麗ではアリマセンカ」

「それとちょっと腕を伸ばせば掴めそうな
まーるい雲。

その下にはにいつも楽しそうな
たくさんのおもちゃ達がいます」



「この世界もこれはこれで、実に素晴らしイ、
とワタシは思っていマス」

しみじみと語るロコタにポプリはようやく、
自分が別世界に来たことを実感してきました。

「うん、そうだね、
ここはとってもステキな所よ!」

「なので、この世界の、この国きってのパレードをなんとしても見ておきたいのです。
次行われるは一年後ですカラ…」

「そっかぁ…」


ポプリは今日のパレードにかけるロコタの思いを感じとりました。


「よーし、じゃぁパレードを絶対に〜〜〜っ、

見よーうっ!」

ポプリはこぶしを高く振り上げました。

「ハイッ! …あっいや、こういう時は
確かこうするんでしたネ」






「あらっまぁ、あなた達、
みかけない風貌(ふうぼう)ですこと。
とっても面白いわ」

二人に横から声をかけてきたのは
ショーダンサーのマスコット人形でした。

「どおかしら、わたくしと一緒に踊って下さらない?
街の男達に飽きちゃったのよ」

「どうやら、我々はナンパされているようですよ、ポプリ」

「踊る踊る!」

ポプリは元気に答えます。

「でも、そのオレンジ色のポンコツは横で見ていてもよくてよ。
どうせその体じゃろくに踊れないでしょうし」

「ムムっ、失礼極まりないです方デスネ」

「そんなことないもん、
コロタンだってちゃんと踊れるもん!
キレのある動き出来るもん!
ねえ、コロタン!」

「えっ!、あいや…ハイ、まー」

ロコタは、ポンコツではないと自負はあったものの、踊りは得意ではなかったようです。

「あらあら、本当ですの? とても信じられないわ〜。
いいわ、では3人であの上で踊りましょう。
もし見事踊りきったら褒美(ほうび)を
差し上げてもよろしくってよ」

「いいのーやったー!」

ポプリはほうびと名のつくものがが大好きです。

第九曲 メイクアップスター



ポプリは自由奔放に、ロコタはとにかくがむしゃらに、そのダンサーは華麗に、通りの脇にあったドレッサーの上で踊りました。

(※しばらくBGMのみです)

ぎこちなさはあるものの、二人は何とか最後まで踊りきりました。

「このわたくしについてこれるなんて
あなた達、やるわね…

仕方ないわ、
一流の踊り手が嘘をつくわけにもいかないし…
これをあげるわ」

ロコタは綺麗なビー玉をもらいました。

「わー綺麗だね、コロタン!」

「まーポンコツには必要ないものだけど。
では、ごきげんよう」

そういってそのショーダンサーは去って行きました。

「なんて感じの悪い人なのデショウ。
全くどこが一流のダンサーなのだか…」

ロコタは少々機嫌を損ねましたが
二人は再び時計橋のある
街の中心の方へ向かいました。

二人はアーケードの商店街に入ります。

「わぁ、人多くなって来た!」

「はい、この通りはこの街でも有数の
オシャレスポットですノデ!」

そこは様々なお店が両サイドに立ち並ぶパサージュ。
今日はいつもより数段活気があります。

「ここを抜けると中央広場に出るはずです。
時計橋はその少し先なので、もう近いですヨ!」


少し進むと楽しげな歌声が聞こえて来ました。

「あっ、ポプリ見て下さい、
歌い手さんがいマス」

「わぁ〜上手だね!」
「もしや音の正体はあの美声ではありまセンカ?」

「ん〜どうかな、なんか違う気がするかも…。
でも何となく近づいてる気はするんだぁ」

「方向とかはわかりマスカ?」

「音が聞こえれば分かるんだけど、
今は聞こえないんだよね…
お昼寝してるのかな〜?」

「なるほど。いずれにせよ、もう少し開けた場所の方がよさそうですね。
広場に向かいましょう!」

「うん!」

その通りはまっすぐに伸び、 天井の磨りガラスからは柔らかい光が差し込んでいます。

二人はひしめき賑わうお店を目で楽しみながら
通りを抜けました…

「ポプリ、中央広場に出ましたよ!」




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