「んーーこれはまずいですね、
ここから時計橋までは大分距離があります。
しかも、階段や坂道の多い八番街周辺を抜けるのはかなり大変…
正直難しいかもしれませんね、、、」
兵隊は少し重い口調で言いました。
パレードは三時からということを
ポプリは思い出しました。
「んんん、、困ったーーーっ!
どうしよう、コロタン…」
「これは確かにピンチですね、
何か打つ手を考えなケレバ…」
「わーーっ、もう間に合わないようっ、
すごい遠いところまで来ちゃったしー、
お外にも出られないし、、ぅ〜〜〜〜〜」
ポプリが今にも泣きそうな声を出し、うずくまっていると、
「大丈夫ですよ、ポプリさん。
難しいけど、不可能ではないはず」
兵隊はポプリの肩をポンっと叩き、
そう声をかけました。
「私を見て下さい…
この身体はもう廃棄寸前というところで、あなたに救われたのです。
死中に活あり、きっと間に合います!」
兵隊はやさしくも力強い声でポプリを励ましました。
「兵隊さん…」
ポプリは少し落ち着きと元気を取り戻したようです。
「といっても、こうしている間にも時間は過ぎてしまいます。
まずは出口を探しましょう」
「そうですね、兵隊殿!
では我々二人が探しますので、ポプリはここで待っていてクダサイ」
ロコタがそう言うと、
「わたしも探すよ!」
「いやしかし、あなたは流石にもう限界でしょう。
これ以上動き回ったら、倒れてしまいまスヨ」
ロコタの言う通り、
ポプリの足と体力は限界寸前でした。
「大丈夫、頑張る!」
「いやデモ…」
「大丈夫だよっ!コロタンと一緒に今日のパレード絶対見るんだもん!!わたしも出口探す!」
ポプリは訴えるように答えました。
「ポプリ…」
「では三人で探して回りましょう」
兵隊がそう声をかけ、
その場から移動し始めました。
少し歩いていると…
「おいっ!、 おいっ! おいっ!」
なにやら近くから声が聞こえてきました。
「 金目のものをよこせ」
「お宝の匂いがする、さっさとよこせ」
怪しげな生き物がそう声をかけてきました。
「あれ、そのぽよぽよ感…
あなたもしかして…
ここに落ちてきた時に偶然わたし達の下にいたクッションさん?」
ポプリが尋ねました。
「クッションじゃねー! ったく寝ている所を起こしやがって…
いいか、俺は鼻がきくんだ、
貴金属や宝石の類、価値のあるものは大抵分かっちまう」
「え、そんなの持ってないよぅ、、」
「わたくしも。 軍人には無縁の代物です。」
「うーんそこのロボットが匂うな」
「ワタシも特にそのようなものハ…」
「はっ!」
その時兵隊が閃(ひらめ)きました。
「もしかしてロコタさん"そのもの"に価値があるのでは?」
「そっか、そうだわ! コロタンは
"びんてーじ" なんだわ!」
「イエ。旧型ではありますが、そこまで古くは… もしかしてコレでしょうか?」
ロコタはダンサーからもらった
ビー玉を取り出しました。
「おう、それだそれっ!」
「なかなかレアなビー玉持ってるじゃねーかっ!
そいつを、くれ」
「ヤダ!
これはコロタンが一生懸命ダンスしてもらったんだもん、絶対あげない!!」
ポプリはすぐさま、言い返しました。
「どーせおまえらにそのビー玉の価値は分かんねーだろが」
「あげないって言ったらあげない!
絶対あげなーーーーーーーーいっ!」
ポプリは腕をバタつかせて懸命に言い放ちました。
「まーそう慌てるな、チビすけ。俺は別に強盗ってわけじゃねーんだ。
そいつをくれたら、代わりに、、
時計橋まで連れて行ってやるよ」
「おねがいしますっ!」
ポプリは見事なおじぎで
応えました。
「ふっ、おまえらそこ行きたいんだろ(俺もそこに用があるんだけどな)」
その生き物は3人の会話を聞いていたようでした。
「こんなガラクタ一つでいいのなら
是非お願いしたいデス!」
言い方に少々トゲはあったもののロコタも賛同しました。
「しかし、どうやって時計橋まで
行くつもりですか?
それに今我々はかなり急いでまして…」
兵隊は問いかけます。
「俺のこの姿をみて見てわからないのか…
ちっ、これだからトーシロは困るぜ。
今日は上空にたくさんあったろ。
空から向かえばけきっとば間に合うだろうぜ」
「空から?」
「ああ 俺は気球船だからな」
「ききゅうせん?」
「おお、そうでしたか、それは素晴らしい!」
「時間ねーんだろ、交渉は成立。
さっさと行くぜ!」
そう言うとその気球船とやらは、
大きく息を吸い込みはじめました。
「おおっ、これは!」
その柔らかそうな体は数倍に膨れ上がりました。
「さあ乗った乗った!」
そして三人は近くにあったゴンドラ部分に乗り込みました。
「そうだ、いいか、
足元にある俺のお宝には触るんじゃねーぞ!」
戦利品なのか、ゴンドラの床には価値のありそうなものがどっさりと無造作に置かれていました。
「全く邪魔デスネ。ポプリ」
「うん、邪魔だね、コロタン」
どうやらこの手のものには関心の薄い二人でした。
「とにかく急ぎましょう!
お願いします、気球船さん!」
思いがけない所で出会った気球のおもちゃ、気球船。
ポプリ達は彼の力を借りることにしました。