それは、脚のとれかけた
兵隊の指人形でした。

「あなた、喋れる?」

ポプリは声をかけます。

「…んん、、おや、こんな所で人に出会えるなんて…」

その兵隊は静かに応えました。

「あたし、あなたの音が聞こえたの」

「音?」

ポプリはあのメロディを口ずさみます。

「…! これは驚いた。
なぜこの曲を知っているのですか?」

「ポプリは心で聞いたその音をたよりに
人間の世界から
この世界までやってきたようナノデス。
なぜ聞こえるかはワカリマセンガ…」

ロコタは説明しました。

「まさかそんなことが…いや、しかし…

その曲は、今日のパレードで演奏するために私が日々練習していた曲なのです」


「ナント!」
ロコタは驚きます。

「ですが、見ての通り脚を怪我してしまい、廃棄されてしまいました」

「そんなー、ひどい!」

「仕方ありません、動けない兵士など
必要ありませんから…

今はこうして、 その曲を心の中で奏でながら 焼却炉にかけられるのを待つばかりなのです」

「そっか…だから
寂しそうな音だったんだね…」

ポプリはようやく、なぜあのような音色だったのかが分かりました。

その音は、自分の演奏を誰かに聞いてほしかったという兵隊の無念の叫びだったのかもしれません。

「でも大丈夫、わたしがなんとかしてあげる!」

「え、?」

ポプリはポーチからソーイングセットを取り出し、取れかけた脚を繋いであげました。

「これは驚いた、ちゃんと動きます。
そうか、それはおもちゃのソーングセット…
ありがとう!」

「コロタンみたいにカチカチだったら治せなかったよ…

あなたがふぇると製でよかったわ!」

「さー兵隊殿、これからパレードに参加して下さい!
ワタシはそのパレードを見るために、
テコテコ村からこの街へやってきたのデス」

「そうでしたか、ロボットさん!
それは長旅でしたな」

「コロタです。 あっ、いや、、ロ・コ・タです!
どうぞお見知り置きヲ」

「しかしせっかく治していただいたのですが、、
実は、私は自分のコルネットをなくしてしまって、、あれでないと演奏は出来ないのです」

「ころね…?」

「コルネットですよ、ポプリ。
管楽器の一種デス」

ロコタはポプリに教えてあげました。

「…って、あっーー! ポプリ1号!
ピエロからもらったハズレまだ持ってマスカ!?」

ロコタが興奮気味に言います。

ポプリがピエロからもらったラッパを取り出すと…

「ななっ、これは
私のコルネットではありませんか!」

プファーーー

「傷だらけですが、音はきちんとなります!
これなら演奏が出来ますよ!」

「本当! やったー!やったー!」

「ハズレどころか大アタリでしたね、ポプリ!」

「では皆さん、共に参りましょう
パレードの行われる時計橋まで!」

兵隊は元気を取り戻したようです。

「あっ、そうだ兵隊さん、お腹空いてるでしょ?
飴玉あげる!」

「最後の一個、
夕焼けブーメラン味、はい!」

「これはありがとう、頂きます」

パク、

「どう?!」

「ええ、美味しいです」

「それだけ?」

「あっ、ええ…とても美味しいですよ」

「他にないのデスカッー! 兵隊殿!
なんか…こう…、一度離れたあの時の黄昏感が再び戻ってくるかのような深い味わいっ、ミタイナ!!」

ロコタは詰め寄りましたが…

「ま、まぁ、言われればそんな感じもしなくはないかと(えっなにそれ)…」

兵隊の淡白な答えに、
二人は少しガッカリしました。

「ところで、今何時だか分かりますか?」

「そ、そうでしたっ!、、あれから結構時間が経ってしまいマシタ!」

兵隊の言葉にロコタは慌てながら脇腹にある時計を見せました。

「 ! 」



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