二人はようやく
目的地である時計橋のふもとに
着きました。
大きな時計塔と橋が一つに
なったこの街のシンボルです。
二人はようやく
目的地である時計橋のふもとに
着きました。
大きな時計塔と橋が一つに
なったこの街のシンボルです。
橋の上を渡っていると、
泣いている男の子のぜんまい人形がいました。
「ねぇきみ、どうしたの?」
ポプリは心配して尋ねます。
「誕生日にもらったスーパーボールを橋の下に落としちゃったんだ…
すごく気に入って大切にしていたのに。
僕の足じゃ降りられない、どうしよう…」
その男の子は寂しそうに答えました。
「それは大変、一大事ね!」
「この下のあたりだと思うんだけど…」
ポプリは橋の上から河原を見渡して探しますが、
なかなか見つかりません。
「ん〜、やっぱりここからじゃ見えないわね…」
「もしかしてあれデショウカ?」
ロコタは河川敷のとある地点にボール状の物体を見つけました。
「え、見えるの? コロタン」
「フッフッフ…ワタシの視力には
折り紙が付属されているのデス!」
「ちょっと待っててね、とってきてあげる!」
そう伝えるとポプリとコロタは橋を降り、
その場所まで行きました。
「あった、これだっ!見た目、なんかゴムっぽいし!」
ポプリがその物体に
手を伸ばしたその瞬間、
「へへーんだ、捕まってなるもんか!」
「うわぁっ 喋った!」
それは、元気一杯のスーパーボールでした。
「それともオイラと
追いかけっこするかい?
先いくぜーー!」
そのスーパーボールはそう言って
ぴょんぴょん跳ねてへ行ってしまいました。
ポプリはロコタの方を何かうったえかけるように見ました。
「分かっていますヨ。追いかけましょう!」
「で、でも、、パレードの時間大丈夫かな…」
「問題ありません。まだ時間はあります。
パレードは三時からですので、あと一時間ありますネ」
ロコタは時計塔を指差します。
「まー大丈夫でしょう。
ちなみにこの世界の一時間は人間の世界より
長いらしいデス。
それにワタシもあの少年の悲しい顔を
どうにかしてあげたいノデ!」
「うん!」
そうして二人はスーパーボールの後を
追っていきました。
「待てーーーーーーーっ!!」
スーパーボールは
建物の壁や床にぶつかりながら
駆け抜けていきます。
複雑に入り組んだ
この街の一角も
彼にとっては
朝飯前です。
ポプリ達も負けじと
追いかけます。
「ひゃっほーーい!
跳ねるの最高っ!」
どうやら
元気が有り余って
いるようです。
「…さすがはスーパーボールの名に恥じない素晴らしい弾性力デス!」
「褒めてる場合じゃないよコロタン
早く捕まえないと!
二人は決して速いとはいえない足で
必死に追いかけます。
しかしスーパーボールは、時計橋からどんどん離れていってしまいます。
「あのボールめちゃくちゃ元気だよね、
逃げられちゃうっ!」
「頑張りましょう、ポプリ!
大丈夫、あれだけ動き回ればスタミナが
切れるはずデス。
見失わなければ、こちらに勝機がアリマス!」
「うん、分かった!」
ポプリは必死に走りました。
しかし一方、
スーパーボールのテンションは
拍車がかかって、最高潮に。
「ヒャッハーーーーーーーーーッ!!」
持ち前の弾性を最大限に生かし、
強く、 速く、 高く、
飛び跳ね放題です。
ここはトッテチッテタウン八番街。
昔ながらの集合住宅が立ち並ぶ旧市街。
気づけば、時計橋からはかなり離れた
街はずれまで来ていました。
二人はすでにスーパーボールを
見失っていましたが、、
「こっちだよ〜ん」
「いたーーーーーーーっ!」
「待チナサーーーイ!」
スーパーボールは二人を嘲(あざ)笑うかのように、住宅地のさらに奥の方、建物が密集するエリアへ跳ねて行きました。
「もうひと踏ん張りです、ポプリ!
足は大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫っ!
早く捕まえてまた橋に戻らなきゃだから、
頑張るよっ!」
二人は最後の気力を振り絞って
追いかけていきました。
「待てーーーーーーーっ!」
そして…
「はーーーダメ…
もう走れないっ…」
人一倍元気なポプリも流石に限界が来たようです。
「そうですね。少し休みマショウカ」
二人は完全にボールを見失ってしまいました。
「それにしても、予想以上のタフボールです。敵ながらあっぱれデスネ。
一体どれだけの元気を溜め込んでいたのでショウカ…」
「でもさー、なんで男の子の所に戻らないのかな?
あの男の子のことが嫌いで逃げちゃたのかなぁ?」
ポプリは少し寂しそうに、言いました。
「どうでしょう。そんな感じには
見えませんでしたガ…」
「そうだよね、大切にしてたって言ってたし…」
「…そうか、なるほど、だからかもしれませんネ」
「ん、どうして?」
「おそらくあの少年はあのボールが
汚れたり傷つくのが嫌で、それほどたくさんは遊んであげてなかったのではナイデショウカ?」
「そっかぁ、だからいっぱい動きたいんだ!
きっとそうだね!」
そう納得しながらも、
二人はパレードまでの時間を考え、
捕獲は諦めて時計橋の方へ戻ることにしました。
「どこ行っちゃったんだろう、ボールさん…」
とぼとぼと歩いていると…
「あっ………
ん?
えっーーー!!?」